夜の森山猫団    フォロー 20 フォロワー 20 投稿数 75

名前変えました。

泣くひとの群れに弾かれ見も知らぬひとに焼香してる火葬場 

アパートを選ぶときには駅よりも最寄りの海を気にして選ぶ 

屋上の金網越しに鳥が過ぐ街に飼われるぼくを見下ろし 

そらを飛ぶ順番待ちをしてるような満月の夜の放置自転車 

アコーディオン縮めるように石段を駆ければ聞こえる音楽がある 

長雨のベランダに干す傘ふたつ困った眉毛のかたちで並ぶ 

縁側に麦茶をいれて祖母が置く冷たいくせに汗かく薬缶 

パンクしたチューブから出た血のように夕日が盥の水面に満ちる 

8Pのピッツァは角を突き合わせ食われる順を議論している 

森のような古書の店では誰もみな木の実をさがす猿の目になる 

秘密基地あった林で葉をゆらす風の隙間に聴いた口笛 

たぶんそこに答えがあって釣り人は疑問符に似た釣り針落とす 

錆びついたチャリで走ればウミネコが仲間と思い近寄ってくる 

階下より空に近づくはずなのによけいに空が遠い屋上 

きみに書くことばを波にさらわれて青に塗られただけの絵葉書 

何事か終わったように青空へきみが句点を描く逆上がり 

職人のように選んだ石をなげ子は遠くまでさざ波を縫う 

夜明けには大人のように凪ぐ風が夢中で缶蹴りしてる真夜中 

靴紐をしゃがんで結び足元のちいさな花と目が合っている 

公園のジャングルジムに座る子の目線を借りて見たい夕焼け 

閉じるたび英和辞典が名もしらぬ虫の棺になる夏の夜 

ひたすらに鳴いて鳴いて鳴いて死ぬ生きる意味など知るかと蝉は 

ときどきは大人をやめて膨らます風船ガムで夕日を包む 

一本の木だった頃に聴いていた波の音するきみのウクレレ 

繫る葉に雨滴がおちる木のしたで雨の日だけの音楽を聴く 

丹念に色をかさねる画家のようにアジサイを塗る雨の筆先 

蝶のようにきみは睫毛を羽ばたかせ物語の森また迷いこむ 

美味しいと言わない父に母にだけ見える尻尾をつけてあげたい 

感情が冬には可視化されるから見えないようにため息をつく 

吊るされた蚊帳に蛍は放たれて夢のなか去る祖母の足音